2018年3月の園長通信より、その一部をお届けします。
春を待ちながら
花壇に植えたチューリップが、一つ、二つと芽を出し、元気が良すぎる誰かさんの足跡の脇からも、たくましく伸びています。チューリップの球根は、冬の寒さに当たることによって、初めて芽が出始めるのだそうです。鉢植えと違って、花壇などに植えた時には、水やりもしなくて良いと教えられた通りにしてみましたが、芽が出るまではとても心配でした。正直に打ち明けますと、土の表面が乾いて見えると、ついつい可哀そうになって、少しだけ、水を遣ったりもしました。雪にも耐えて、グイと顔を出したたくましい緑の芽をみていると、(心配無用だったな。辛抱が足りなかったな)と、申し訳ないような気持ちにもなります。辛抱して、見守りながら、待つ。命を育てると言うことに、共通して必要な心かも知れません。
「お仕事」の小窓 第3回
今日は、「算数教育」についてお話します。
「算数教育」というと、みなさんはどのような情景を目に浮かべますか?「足し算」や「掛け算」の暗記をする子供たちの様子でしょうか?それとも、ずらりと問題の並んだプリントに一心に取り組む姿でしょうか?
モンテッソーリ教育における「算数教育」では、子どもたちに無理のない形で、数の教育が行われていきます。子供たちは、「算数教育」で、初めて数の世界と出会うわけではありません。数の世界に対する子どもからの要求は、「算数」に出会う前からすでに現れています。モンテッソーリ教育の考え方は、人間は、生まれながらに「数学的精神」を持っているというものです。例えば、横断歩道の白い部分を避けて歩くという決まりを自ら作ってそれを守る態度、ミニカーをズラリと並べて悦に入る様子などには、数学的思考の芽生えが現れているのです。
「算数教育」では、どこかで、いつか、子どもたちがすでに出会っている何かを、意識して、それが何なのか、今はっきりわかるという理解の仕方をします。自分が知っているはずの物が何なのかが「はっきりわかる」という経験は、子どもの知性をグンと伸ばします。ここから、2月に実際に教室で行ったお仕事を1つだけ紹介します。
【両替遊び】(銀行遊び)
目的:①両替の規則の理解 ②位取りの理解を深める
子供たちは、すでに金ビーズと数字カードを使って、10進法に触れています。1のビーズが10個で10のビーズになり、10のビーズが10個で100のビーズになり、100のビーズが10個で1000のビーズになることを体験済みなのです。
両替をしてもらう役が3人、一人は銀行屋さんと、役割を決めてお仕事を始めます。先生の机の上には、予め各位のビーズが10以上になるように、ビーズが準備されています。1の位から数え初め、10になったらまずはAさんが銀行屋さんに行き、10のビーズ1本と取り替えてもらいます。両替して来たビーズは他の10のビーズに混ぜてしまい、残りの1のビーズを数えます。そして、その数に見合った数字カードを持って来て、ビーズの下に並べます。このように、10のビーズ、100のビーズと進めて行き、最後に1000の位の数字カードを並べたら、4枚の数字カードを重ね、初めにビーズがいくつあったのかを確かめます。
これが後に行う足し算、掛算、割り算、引き算の前段階の練習となっています。子供たちはごっこ遊びをしながら、数量、数詞、そして、数字に親しんでいき、10進法をよりしっかりと理解していきます。提示の後で「やって見る?」と声をかけると「はい」と、元気な答えが返ってきました。大掛かりなお仕事なので、できるかなと心配だったのですが、翌日、教室をのぞいてみると、それぞれが役をもらって、「先生」の役までも受け持ちながら、愉快にお仕事をしていました。
子供たちの知的要求の高まりをただ待つのでなく、引き出した時の手ごたえ。
「算数教育」の醍醐味を感じる瞬間です。