ここには、毎月保護者の方にお渡しする「園長通信」の中から、
園でのモンテッソーリ活動の様子を
お伝えするコラム「お仕事」の小窓を転載します。
2018年1月号より:
「お仕事」の小窓(1)
今回は、「日常生活の練習」から、「ハサミで切る」を紹介します。
そもそも、モンテッソーリ教育における「日常生活の練習」とは何なのか?お子様たちがお家に持ち帰った「シール貼り」や「縫う」お仕事の作品をご覧になり、「上手ね」「がんばったね」とほめて下さっておられると思います。でも、それが何の役に立つのか、実感は少ないかも知れません。
今日、写真でご紹介するのは、2学期に、お子様が作りましたクリスマスツリーです。この作品を作るまでにお子様は数段階のお仕事に取り組んできました。
①直線を切る(短い直線、長い直線)
②曲線を切る(短い曲線、長い曲線)
③図形を切りぬく
④直線と曲線から成る型を切りぬく
⑤力を込めて固いものを一気に切る
(写真左:一回切りで星を切る)
⑥自在にハサミを使って、型を切り抜く
「切る」というお仕事は日常生活の練習の中で、「基本運動」を獲得するお仕事として、位置づけられています。この手先の運動を獲得することが、日常生活で生かされていくことはもちろんのこと、後に行う知的かつ創造的な活動の基礎となるのです。
日常生活の練習の目的は…
直接目的:運動の完成、つまり、自分の意志通りに動く身体を作ること。精神的な面から考えれば、子どもの内面に、自立心、独立心を育てること。これが自信につながります。
間接目的:人格形成に必要な理解力、行動力、意志力、集中力などを養成するとともに、社会性を養う。
「ハサミを使って、工作しただけで大げさ」と思うかも知れませんが、初めは、ハサミと紙を両手にそれぞれ持って、「どうすればいいの?」と助けを求めるだけだったお子さまが、「自分でできた」と喜び、「自分でやる」と、次のお仕事を選んで来る姿は、そのまま、自立心の目覚めです。また、一つの作品を完成させる体験を通して、発揮される行動力、集中力は、目を見張るものがあります。
クリスマスツリーには、この間に身に付けた「切る」という動作が全部使われていると同時に、「糊で貼る」ことも含まれています。この作品を作ったお子様は、実は、糊を指に付けるのが大嫌いでした。「切る」と同じように、段階を経た「貼る」お仕事を通して、指を汚すことに対する抵抗感を、克服して来たのです。
日常生活を通して身に付けた手の動きを存分に使って、自分が表現したいものを創り出す。一つのクリスマスツリーに、「上手」の一言で終わらせられない成長のドラマがあります。このような、小さいドラマの積み重ねが、教室では毎日生まれています。
紙の切れ端や、小さい破片、紙屑かしらと思うような「作品」が届きましたら、ハサミを手に、一心に「お仕事」しているお子様の姿を思い描き、次に届くものを楽しみにしていて下さい。